Computer Security Symposium 2023 Computer Security Symposium

基調講演

基調講演1 10月30日(月)11:00~12:20

二宮 賢治 氏 (株式会社みんなの銀行 サイバーセキュリティグループ リーダー, ゼロバンク・デザインファクトリー株式会社 執行役員)

デジタルバンクのプライベートSOCの現況と課題、サイバーセキュリティ対策のこれまでとこれから

<講演概要>

みんなの銀行は、スマホ完結のデジタルバンクとして、クラウドネイティブな基幹システムを構築し、運用しています。実店舗がなく、スマホのみをお客様との接点とした銀行にとって、サイバーセキュリティは最重要領域であり、その対策には最大限の注意を払っています。当行では、クラウドネイティブな環境の中でお客様の大切な資産や情報を守るため、多層防御を実装するとともに、SOC(Security Operation Center)を内製し、アラート監視やインシデント対応を自ら行っていますが、その中で様々な課題が見えてきました。本講演では、みんなの銀行のプライベートSOCの現状と、その効率化や課題解決へ向けた取り組みについてご紹介いたします。

<講演者ご経歴、プロフィール>

1990年、国内SIベンダーに入社。インフラ系SEとして、インターネットバンキングシステムや日本初のネット専業銀行の設立に携わった後、2003年に同行へ出向、その後転籍。基幹系システムの基盤を担当後、サイバーセキュリティ専任部署のリーダーとして、CSIRTや社内SOCの立ち上げに従事。2020年3月より、みんなの銀行/ゼロバンク・デザインファクトリーに転職し、みんなの銀行設立プロジェクトに参画。ITガバナンス、サイバーセキュリティ対策と組織の構築を推進。趣味:音楽、ギター演奏

基調講演2 11月2日(木)13:40~15:00

酒井 敏 氏 (静岡県立大学理事・副学長/京都大学名誉教授)

一流の研究は計画通りに進まない

<講演概要>

この世界は、自然界も人間社会もカオスに満ちています。我々の先人たちは、そのカオスの中から、法則性をみつけ、将来の予測をある程度可能にしてきました。ところが、エドワード・ロレンツの決定論的カオスの発見により、決定論的な系でさえ、多くの場合このカオスの呪いから逃れられず、長期の予測は不可能であることが明らかになりました。しかし、このカオスな世界にあって、生物の生態系は長期にわたり一定の秩序を保っています。生態系の仕組みは一見非効率ですが、時にはカオスさえ利用しているようにも見えます。

このような視点で見ると、いまだに経済界で金科玉条の如く語られる「選択と集中」を長期にわたって続けることは、絶滅への道であることは明らかです。ましてや、学術における研究とは、未踏のジャングルを進む冒険のようなものであり、計画通りに進むわけがありません。一見ムダと思える知識の集合体から、あらたな道を探索するのが、本来の研究です。

国立大学が独立行政法人化されて20年。そろそろ学術界は本来の道に戻るべき時が来ているのではないでしょうか。

<講演者ご経歴、プロフィール>

1957年生まれ。理学博士(京都大学)。京都大学教養部、大学院人間・環境学研究科教授を経て、現職。専門は地球流体力学だが、都市のヒートアイランドを緩和するフラクタル日除けを開発するなど、研究分野は多岐にわたる。2017年より「京大変人講座」を主宰し、注目を集める。著書に『都市を冷やすフラクタル日除け:面白くなくちゃ科学じゃない』『京大的アホがなぜ必要か:カオスな世界の生存戦略』『野蛮な大学論』『カオスなSDGs:ぐるっと回せばうんこ色』など。