私たちは1つだけの「現実」ではなく、それぞれの内面に固有のリアリティを持っています。SNSの空間を主な生活の場とする人もいれば、物理世界に根ざした経験を重視する人もいる。VR/AR技術やインターネットは、こうした多様なリアリティをますます接続し、重ね合わせていく基盤となりつつあります。
この流れの中で、セキュリティとプライバシは新しい局面を迎えています。VR/ARデバイスやサービス固有の新たなリスクや脅威が登場すると同時に、暗号や認証、OSやシステム基盤、プライバシ保護、ユーザブルセキュリティ、トラストといった領域は、接続するリアリティを支える社会において、かつてないほど重要性を増しています。さらに、人間の認知機能そのものが新たな攻撃面となり得ることも明らかになりつつあります。 本講演では、VR/ARに関わるリスクと防御の現状を概観しつつ、この分野が「誰か特定の専門領域」だけでなく、コンピュータセキュリティシンポジウムに関わるあらゆる研究分野と交差していることを示します。いまこそ、攻撃者に先んじて、研究者と技術者が新たなリアリティの安全を築く稀有なチャンスの時です。