Computer Security Symposium 2025 Computer Security Symposium

基調講演

基調講演

金岡 晃 氏 (東邦大学 理学部 教授)

それぞれの現実、そのあいだに
― 接続するリアリティがもたらすセキュリティとプライバシの新たな役割

<講演概要>

私たちは1つだけの「現実」ではなく、それぞれの内面に固有のリアリティを持っています。SNSの空間を主な生活の場とする人もいれば、物理世界に根ざした経験を重視する人もいる。VR/AR技術やインターネットは、こうした多様なリアリティをますます接続し、重ね合わせていく基盤となりつつあります。

この流れの中で、セキュリティとプライバシは新しい局面を迎えています。VR/ARデバイスやサービス固有の新たなリスクや脅威が登場すると同時に、暗号や認証、OSやシステム基盤、プライバシ保護、ユーザブルセキュリティ、トラストといった領域は、接続するリアリティを支える社会において、かつてないほど重要性を増しています。さらに、人間の認知機能そのものが新たな攻撃面となり得ることも明らかになりつつあります。 本講演では、VR/ARに関わるリスクと防御の現状を概観しつつ、この分野が「誰か特定の専門領域」だけでなく、コンピュータセキュリティシンポジウムに関わるあらゆる研究分野と交差していることを示します。いまこそ、攻撃者に先んじて、研究者と技術者が新たなリアリティの安全を築く稀有なチャンスの時です。

<講演者ご経歴、プロフィール>

2004年筑波大学博士号取得(工学)。セコム株式会社研究員、筑波大学研究員・助教、東邦大学講師・准教授を経て現在、東邦大学理学部情報科学科教授。ヒューマンファクタに焦点を当てたユーザブルセキュリティ研究や高機能暗号の実用化研究、VR/ARセキュリティ研究に従事。2002年、コンピュータセキュリティシンポジウム2002(CSS2002)で初めてのセキュリティ分野での発表、2017年にユーザブルセキュリティワークショップ(UWS)を立ち上げ。