攻撃者視点の研究が増えていますが,標的組織の内部情報を有する攻撃者によるセキュリティ対策の回避という問題設定は,今日的課題としてとても興味深いものです.前提となる内部情報の定義などややあら削りなところが見受けられ,実際に運用されているセキュリティ対策を用いた検証実験にやんちゃな印象を受けますが,本研究で示された弱点とその対策は,学術界および産業界の両者で今後の研究が活性化される期待を秘めており,まさにコンセプト論文賞の趣旨に相応しいと判断いたしました.
CSS2016論文賞 受賞者
CSS2016最優秀論文賞
2E2-1: Trojan of Things: モノに埋め込まれた悪性NFCタグがもたらす脅威の評価
1C3-2: まぜるな危険準同型暗号
CSS2016優秀論文賞
2B3-4: システムコール処理による権限の変化に着目した権限昇格攻撃の防止手法
3A3-4: 属性情報と履歴情報の秘匿統合分析に向けた秘密計算による高速な等結合アルゴリズムとその実装
3A4-2: カイ二乗検定の幾何的解釈に基づく差分プライバシーの実現
CSS2016学生論文賞
1D4-1: 仮想デバイスへのリクエストフィルタの導入によるハイパーバイザの脆弱性回避
2E2-4: Androidアプリケーションにおける電子署名の大規模調査
3E1-2: IoT機器へのTelnetを用いたサイバー攻撃の分析
2C3-3: 単純なデータ構造を用いた検索可能暗号
3C4-1: CRT-RSAを攻撃する格子の新たな構成法
3B3-1: Webトラッキング検知システムの構築とサードパーティトラッキングサイトの調査
2B3-2: 動的解析ログを活用した静的解析補助手法の提案
CSS2016コンセプト論文賞
3F4-3: 標的組織の内部情報を有する攻撃者を前提としたセキュリティアプライアンス評価
コンセプト論文賞講評
CSS2016奨励賞
1A3-1: 追跡可能性を持つ名簿システムにおける結託耐性と分割耐性
3A1-3: 匿名加工・再識別コンテストにおける有用性と安全性指標の社会実装に向けた検討
3A2-4: 行列分解を利用した確率的k-匿名性を満たす高次元データ公開法
3C2-1: Parallelizable Message Preprocessing for Merkle-Damgård Hash Functions
3E2-1: SIM-Sign: 実用的なAndroid端末向けMitMo対策技術
3F2-3: 長期的な攻撃元ホストの振る舞い調査
3C4-5: 漏えい鍵共有グラフにおける効果的な鍵選択に関する考察
論文賞概要
CSS2016では下記の論文賞を設けています.
CSS優秀論文賞・学生論文賞・コンセプト論文賞
CSS論文賞には最優秀論文賞及び優秀論文賞,学生論文賞,コンセプト論文賞があり,CSSプログラム委員会が選考します.CSS論文賞は,下記に示す他の論文賞との重複受賞が可能です.詳しくは,CSS論文賞についてをご参照ください.
CSS2016SPT論文賞
CSS2016における発表論文のうち,セキュリティ心理学とトラスト分野の活性化を目的とし,同分野にとくに貢献すると認められる論文1編または数編を,SPT研究会の定める選考委員会における審議を経て,SPT研究会がCSS2016SPT論文賞として表彰します.詳しくは,SPT研究会のホームページをご参照ください.
MWS論文賞
MWS実行委員会では,MWS優秀論文賞,MWS学生論文賞,MWSベストプラクティカル研究賞を設けています.MWSトラックにおける発表論文のうち『マルウェア対策・サイバー攻撃対策に有効な方法論に新規性があるもの(新たなマルウェア対策・サイバー攻撃対策を喚起するもの.今後多数の研究の参考・根拠になり得るもの)』,『マルウェア・サイバー攻撃の現状・実態を明らかにする実験・調査』,『マルウェア対策・サイバー攻撃対策の現状・問題点を明らかにする実験・調査』の評価基準により,MWSプログラム委員会が各1件を選出します.なお,MWSベストプラクティカル研究賞については,論文としての完成度ではなく,実用性や有効性に優れた研究成果を評価するものです.詳しくは,MWS2016のホームページをご参照下さい.
PWS論文賞
PWS実行委員会では,PWS優秀論文賞,PWS学生論文賞を設けており,PWSトラックにおける発表論文のうち『プライバシー保護技術の発展』や『プライバシーリスクの正しい啓発』にとくに貢献すると認められる論文1編または数編を,PWS実行委員会の定める選考委員会における審議を経て表彰します。詳しくはPWS論文賞についてをご参照下さい.
奨励賞
論文集に掲載されたすべての論文を審査対象とし,論文賞には到らなかったが,評価者の評価が高かったもの,新規性の評価が高かったものを,今後への期待や激励の意味を込めて表彰します.詳しくは,奨励賞についてをご参照ください.
CSS論文賞について
本シンポジウムでは,コンピュータセキュリティ技術の発展や啓発に寄与する論文の著者を表彰することを目的としたCSS論文賞を設けております.CSS論文賞には,新規性,信頼性,実用性を兼ね備える優秀論文を表彰する最優秀論文賞及び優秀論文賞と,将来性のある学生を奨励する学生論文賞,および次の時代を切り開く独創的な研究を表彰するコンセプト論文賞の4つの論文賞があり,その年に開催される懇親会にて表彰しております.各論文賞の要件は次のとおりです.
- CSS最優秀論文賞(最大2件程度)
論文集に掲載されたすべての論文を審査対象 (論文執筆要領を著しく逸脱した論文は審査対象とならないことがあります) とし,新規性,有用性,実用性の観点で特に優れた論文が発表された場合,その著者を表彰します.過去の受賞経歴を問いません. - CSS優秀論文賞(4件程度)
論文集に掲載されたすべての論文を審査対象 (論文執筆要領を著しく逸脱した論文は審査対象とならないことがあります) とし,新規性,有用性,実用性の観点で優れた論文の著者を表彰します.過去の受賞経歴を問いません. - CSS学生論文賞(6件程度)
論文集に掲載された論文のうち,講演者が学生の論文を審査対象 (論文執筆要領を著しく逸脱した論文は審査対象とならないことがあります) とし,新規性,有用性,実用性の観点で優れた論文の著者を表彰します.ただし,過去に学生論文賞を受賞した者が講演する論文は本賞の審査対象とはなりません.また,学生には社会人特別選抜またはそれに類似する制度で入学した者を含めません. - CSSコンセプト論文賞(1件)
論文集に掲載されたすべての論文を審査対象 (論文執筆要領を著しく逸脱した論文は審査対象とならないことがあります) とし,新規性が極めて高い論文を表彰します.過去の受賞経歴を問いません.なお,本賞はコンセプト論文賞選考委員会(選考委員長:CSEC研究会主査,選考委員:CSEC研究会幹事,CSSプログラム委員長,CSSプログラム委員)により審査され,同委員会の委員長であるCSEC研究会主査により表彰されます.
CSSが設置する各賞の受賞者のうち最低1名(原則として講演者)は懇親会への出席が義務付けられます.
CSS最優秀論文賞及びCSS優秀論文賞と学生論文賞の選考は,当該分野に関して高い専門的知識を有する査読者2名による1次評価,各トラックのプログラム委員会による2次評価,トラック横断で各賞を最終選考する3次評価の3段階からなります.